1.そろばん式暗算
まず、「そろばん式暗算」について、ご理解ください。
一言で表現すると、間違いなく「世界最強の暗算法」です。
当校独自の指導法で短期間にて生涯役立つ高度な暗算力を獲得できます。
教室で定期発行している「渋谷そろばん新聞」の特集記事より
●算数とそろばん 暗算の違い
今回のテーマは、当校が注力する「そろばん式暗算」です。そろばん経験の無い保護者様にも、「そろばん式暗算」がどのような技術かご理解いただくために、「算数暗算」との比較で説明します。実際は「算数暗算」との定義はないのですが、ここでは、そろばん未習得の人が多くやる暗算のやり方を 「算数暗算」と呼ぶことにします。普段からお子さまのスゴイ暗算力に驚き、「なぜできる?」と思われている保護者様、以下をお読みくだされば、その謎が解明されると思います。
暗算の「技術」の違い
暗算の「技術」、について、大きく5つ説明します。足し算を中心に説明しますが、引き算も基本は同じ、かけ算とわり算は九九に足し引きが組み合わさるだけなので基本は同じです。
① ベース(頭の中)
頭の中で暗算する数字をどう持っているか、です。
算数暗算は、頭の中で「にじゅうろく」と言語で処理します。だから、言語を司る「左脳」を使います。算数暗算に限らず、そろばん以外の計算法は全て言語の処理です。一方、そろばん式暗算は言語ではなく図形(そろばんの珠)で処理するので図形を司る「右脳」を使います。この図形での処理ができるようになるために(=右脳を使えるように)、暗算に入る前に、そろばんを弾いてしっかり訓練します。
② 使う能力の種類
暗算するために使う能力は、算数とそろばんで異なります。
算数暗算は、まず、問題を見て何をすべきか思考判断し、言語記憶から計算結果を取り出します。記憶と言われると違和感があるかもしれませんが、足し引きも九九と同じく、あらじめ暗記した計算結果の数字を頭の中から取り出すこと(例:3+4だと7)が算数暗算です。その長期記憶は、言語記憶(数字も言語)なので間違えたり曖昧になりがちで、計算覚えたてで記憶に自信が無い子供は指折り数えたりしますよね。
一方、そろばん式暗算は同じ長期記憶でも言語記憶ではなく身体記憶です。自転車に乗るとか歩くなどと同じ性質で一度身に付くと、風化して忘れることも間違えることもまずありません。また、計算途中では短期記憶も使います。そろばん式暗算は短期記憶の訓練でもあります。短期記憶はPCで例えると一時的に記憶するメモリーです。メモリー増設すれば高性能になるように、短期記憶を鍛えれば、計算以外の分野でも頭の回転が速くなります。
③ 計算の順番
皆さんあまり気になったことも無い観点だと思いますが、「計算の順番」にも違いがあります。これも意外に重要です。
数字をいくつ計算するかをそろばんでは、「口(くち)」と言います。(例)の計算は、数字が4つだから「4口(くち)の足し算」と言います。このような口数が多い計算の場合、算数暗算では、例のようにまずは全体を見渡し、ちょうど10になる組み合わせを先に計算するなどがよくあるやり方だと思います。なぜでしょう?
・・・それは、暗算過程で、「キリのイイ10は頭の中で保持するのが楽」、あるいは、「10になる足し算は簡単」との感覚からですよね。ただし、例題のようにキレイに10になる計算は滅多に無く、その組み合わせを作るのに余計な時間がかかり、実際は有効な暗算法とは言えません。もっとハッキリ言ってしまうと、「暗算ができない」からこそやる方法ですよね。例題の足し算だけでなく、引き算やかけ算、わり算でも、やりやすい順番で計算するのはよくあることで、むしろ正しく賢いやり方だと思われています。しかし、もし電卓可なら、迷いなく表記順の通りに足していきますよね。そろばん式暗算は頭の中に電卓を持つようなものなので、組み合わせなど考える必要はありません。何桁の計算であろうと関係無く、ただ順番に足していくのみです。
④ 数字の「焦点」と「クリア」
本項は、そろばん未経験の方への説明がとても難しい項目ですが、重要な技術です。計算する時、どの数に焦点を当てるか(注目するか)です。
算数暗算では「足す数」と「足される数」の2つを頭の中に置いて計算する・・・、当たり前のことですが、口数や桁数が増えるとどうなるでしょう?頭の中はいろんな数で溢れ、「あれ?今いくつだっけ?」となってしまいます。暗算なのにメモしたくなりますよね。口数や桁数が大きくなればなるほど、算数暗算で処理するのは本当に至難の業です。
一方、そろばん式暗算では、「足す数」だけに焦点を絞ります。「足される数」も頭にありますが、そろばんの訓練によって「頭の中の置く場所」が異なるため混乱することも無く、常に足す数だけを見て処理します。だから、大きい桁数も扱えます。そして、更に重要な技能があります。それは、計算を終えた数(=ゴミ)を都度クリアすることです。PCで例えると「キャッシュをクリアする」のように、用が済んだ数は頭(短期記憶)から削除することで、数が溢れて混乱することもありません。だから、口数がいくら増えても大丈夫です。
暗算の訓練で身に付く「クリアする」技術も、計算に限らず頭の回転を速くするため、あるいは持てる力を最大限発揮するために非常に有効な技術です。例えば、速いテンポで有効な議論ができる人は、済んだテーマにとらわれず・こだわらず、必要に応じて頭を「クリア」する能力に長けています。テストの際、回答し終えた問題が気になって今解いている問題に注力できないということもありがちですが、今やるべきことに注力する、つまり、集中するためには、「クリアする」技術が有効なのです。
⑤ 計算のパターン数
算数暗算とそろばん式暗算では、記憶の種類が異なることを説明(②)しましたが、いずれの暗算法も計算結果を記憶することが必須です。「九九」で覚えるのは、9×9通りで全部で81パターン、算数暗算とそろばん暗算で同じです。少し余談ですが、九九は「ズル」をすれば、覚えるのは81ではなく36パターンで済みます。まず、1の段は掛ける数がそのまま答なので(例:1×3=3)除外できます。残りは、かけ算は式をひっくり返しても答は同じなので(例:6×7と7×6の答は同じ)半分を覚えれば済みます。
ただ、計算中にひっくり返すのは時間がかかり間違えやすく、たとえ覚えるパターンが少なく済んでも、問題有りですよね。暗算が苦手な人はこのように九九や足し算にて「ひっくり返すやり方」をしている人が多いようです。
次に、足し引きですが、上の表のように算数暗算とそろばん式暗算で記憶しなくてはならないパターン数が大きく異なります。そろばん式暗算は算数暗算の約5分の1を記憶すれば済みます。同じ数字の計算なのにパターン数が異なるのは不思議ですよね。そもそも、算数暗算で126ものパターンを暗記していること自体、自覚も無く意外だったのではないでしょうか。でも本当なのです。百ます計算のように表にするとこんな感じです。整理してみると「そりゃ間違えるし、計算キライにもなるよね」と思うのではないでしょうか。


そろばん式暗算は足し引き合わせ、覚えるのは26パターンで全てですが、そろばんの珠の動きで記憶しているので、算数暗算のように全ての数字の組み合わせを個別に記憶する必要がありません。置いてある珠(足される数)に対し、(足す数の)珠がそのまま素直に入るか入らないか(繰り上がるかどうか)、その際に5珠を使うか使わないか、・・・パターンはこれだけです。絵にかいて説明します。
素直に入る例は、3+6、入らないのは繰り上がる7+4です。
更に、「入る」・「入らない」それぞれで「五珠を使う」かどうかがあり、それで足し算パターンは全てです。紙面スペースの問題で詳しい説明は今回は省略させて頂きますが、結果だけ言いますと、珠の動きを身体記憶で覚えるパターン数はこのようになります。
④でご説明したように、そろばんでは足す数と足される数の組み合わせではなく、足す数だけに注目し、それが素直にそろばんに入るか入らないかによってパターンが決まります。足し算のパターンは右の表の通り、全26パターンです。更に、引き算があるのですが、実は、そろばんの珠の動きは足し算と引き算は対称になるため、足し算の26パターンの逆パターンが引き算となり、新たに覚える必要はありません。よって、足し引き合わせ、全部で26パターンです。
●そろばん式暗算 大きな誤認識
今回は、そろばん式暗算の大きな「誤認識」について話をさせてください。普通なら、誤認識は生徒さん側で発生していると思われるでしょうが、今回は違います。当校、他珠算塾の先生方、そろばん業界全体の誤認識の話です。実は、当校は気付いてしまったのです。これまでずっと常識、当たり前と思っていたことが間違いであったことに…。指導する側が誤認識していたなど、本当にお恥ずかしい話ですが、暗算技術の根幹に関わる重要事項なので、包み隠さず全てお話しします。ただし、誤認識を発見したことによって、大きく指導改善を実現できましたので、そこまで説明させてください。
そろばん式暗算のやり方(業界の常識)
暗算の「技術」、について、大きく5つ説明します。足し算を中心に説明しますが、引き算も基本は同じ、かけ算とわり算は九九に足し引きが組み合わさるだけなので基本は同じです。
そろばん式暗算のやり方は、一般的に、「そろばんを頭の中で動かす」と言われています。これまで他校や珠算連盟等、たくさんのそろばんの先生と話してきましたが、誰しもその認識です。また、各種文献やネット上のサイトや動画等、どれも見ても同じく、「そろばんを頭の中で動かす」です。当校でも授業では、「頭の中のそろばんを動かしなさい」、「指を動かして珠を動かすイメージをしなさい」と指導してきました。私たち講師も自ら暗算する際は、頭の中のそろばんを弾いて動かしている感覚があり、当たり前過ぎることでした。
当校は暗算に注力し、長年研究し、カリキュラムや指導法を継続的に改善してきました。これまででも他の珠算塾よりは明らかに早い進級スピードでしたが、暗算は生徒個人差も大きく、伸び悩む生徒もいて、指導は大きく改善する余地があることだけは間違いないと見ていました。しかし、何が問題なのか、その核心が掴めない状況が続いていました。
本当に頭の中で珠を動かしているのか?
いくら探しても問題解決の糸口が見つからないため、「当たり前を疑う」ことからやるしかないと考えました。そこで、そろばん業界では常識中の常識、「そろばんを頭の中で動かす」について疑うことにしました。そろばん技術を使って暗算するまではいいのですが、「動かす」のは本当か? 本当に動画のように動かしているのか? 暗算上級者の多くは、暗算する際に指を動かし、頭の中のそろばんを動かしているのだろうし、私たち講師もその感覚で、「珠を動かしている」ことに疑う余地も無いと思っていました。しかし、疑問もあります。脳内の処理をPCに置き換えて見ると、動画再生には大きな処理負荷がかかる上、静止画と比べて記憶容量も桁外れに大きくなります。そう思うと、珠を動かす、動画を再生するなど、脳にかなり大きな負担がかかるやり方です。脳は常に高効率の処理を求めるのに、これが本当に正しいのかと思えてきました。
また、事実として、上級者になるほどそろばんを弾くより暗算の方がはるかに速く処理できます。これは、ある一定以上のレベルになると、指を動かすという物理的な制約が無い暗算の方が速く処理できるために起こる現象です。上級者のそろばんを弾くスピードは目で追えないほど速いのですが、暗算はそれよりも高速で頭の中のそろばんを動かしていることになります。ここで疑問が発生します。目で追えないほど高速の珠の動きを頭の中で動画のように動かす意味はある? そもそも、それができるのか? ・・・整理すればするほど、当たり前だと思っていた「そろばんを頭の中で動かす」という常識が音を立てて崩れてきました。
どうやって歩いているか説明できる?
ここでまた別の観点の検討です。そろばんは考えてやるのではなく身体記憶でやります。そろばん式暗算も考えてできるスピードをはるか超えているから身体記憶でやっていることは間違いありません。身体記憶とは、歩いたり自転車に乗ったりなど、何も考えずにできる動作のことですが、その身体記憶の動作を言葉で正しく説明できるでしょうか。例えば、「どうやって自転車に乗るか教えてください」と言われても、正しく言葉で教えられる人はいないと思います。 「右脚と左脚、交互にペダルを踏んで…」「バランス取って曲がるのはその方向に重心かけて…」など、どんなにきちんと説明しようとしても無理ですよね。そして、それを聞いただけで自転車に乗れない人が乗れるようになるはずもありません。縄跳びや逆上がりなど、身体記憶でやることは全て同じ、言葉で表現するのは非常に難しく、必ずしも正しいわけではないのです。
そろばん式暗算も全く同じです。そろばん式暗算ができる人の「そろばんを頭の中で動かす」との感覚が、デタラメでないにしろ、いくつかある矛盾から正確な表現ではないと見るのが妥当です。特にそろばんの先生は名人のような人ばかりで、そろばん技能の身体記憶は当たり前を通り過ぎていて、それを言語化し、説明するのは非常に難しいのだと思われます。職業柄か、説明が苦手な人も多いようにも思えます(当校の私たち講師含め)。それが暗算技能の指導、習得を難しくさせている原因の一つと考えられます。つまり、長年、そろばん業界全体で大きな誤認識(そろばんを頭の中で動かす)をしている可能性が高いと考えられます。
頭の中のそろばんの実態を解明!
ここまでのことを整理すると、「そろばんを頭の中で動かす」の「動かす」が間違っている、誤認識の可能性が高いと考えられます。では、暗算する際の頭の中は、実際どうなっているのでしょうか。結論から言いますと、そろばんの珠の「動画」ではなく、「静止画」で持っているのが正解でした。そろばん式暗算の上級者は、最新の計算結果のそろばんの珠の静止画1枚だけ持ち、計算する度にそれを書き換えているのです。計算のテンポが速く、それが高速過ぎて、暗算する当人が、まるでパラパラ漫画のように珠が動いているように錯覚していることが分かりました。たくさんの上級者や名人クラスの人に聞きましたが、しっかり聞くと、絵のイメージはバラツキがあるものの基本は皆さん同じだと分かりました。
また、「そろばんを頭の中で動かす」根拠として、暗算の際、指を動かす上級者の存在が挙げられますが、それをしっかり検証すると、その指は、頭の中のそろばんを正確に弾いているわけではないことも分かりました。そもそも指で弾けるスピードならそろばんでも同じ速さで計算できるはずですが、暗算の方がはるかに速いので論理的にも、指で正確に珠を弾いていないのは明白です。ではなぜ指を動かすのか? …それは、指を動かすこと、リズムを取ることによって、そろばんで身に付けた身体記憶を引き出しやすいからです。だから指を動かすこと自体は有効なやり方であることも事実です。
身体記憶、無意識で見えない頭の中のことなので、この実態を掴むのに苦労しましたが、ようやく掴めました。間違いありません。当校の講師、他珠算塾の先生、そろばん業界全体が誤認識していましたが、暗算時、頭の中のそろばんの珠は「動画ではなく静止画」です。間違いありません。私たちも「暗算は頭の中の珠を動かす」と指導を受けてきましたが、それが間違っているとまで言えないにしろ、正しく実態を示すものではありませんでした。これでは、人によって上級で伸び悩むことがあるもの無理はありません。これが分かった時、私たちにとってはとてつもなく大きな衝撃でした。
暗算指導の大幅改定が必須に!
暗算する際、頭の中のそろばんは、「動画ではなく静止画」、この事実が判明したことにより、暗算指導を土台から大きく見直すことが必須となりました。これまでは「指で(頭の中のそろばんの珠を)動かして」と指導してきましたが、それが生徒の暗算習得の妨げになっていたのかもしれません。これが分かったのは約1年前ですが、すぐに指導を変更しました。ただし、誤認識が分かっただけで、まだ新カリキュラムは組めておらず、もし組めてもテキストを全面改訂、発行するには時間を要します。そこで、補助プリントを作成し、それを活用した成果を検証してカリキュラムを少しづつ改善することを繰り返しました。
例えば、暗算に必要な身体記憶は、そろばんを弾く過程ではなく、その結果(答の静止画)です。そのため、暗算に入る前の準備として、基礎的な足し算引き算をできるだけ高速で弾き、問題を見た瞬間に答の珠の形が頭に浮かぶようになるまで繰り返し訓練するようにしました(これを「反射そろばん」と呼んでいます)。その効果は抜群でした。これから新たに暗算に入る生徒はもちろん、ある程度、暗算が進級した生徒も少し戻ってこの訓練をすれば明らかに暗算がグンと伸びるようになりました。暗算は頭の中の「静止画」との仮説が正しかったようです。そして更に、その静止画の精度を上げるため、頭の中でどのような珠を浮かべるか具体的な絵で示しました。その静止画を今の時代に合わせ、「スクショ」と呼ぶようにしました。
生徒が頭の中で静止画を作ることを意識した上で、その訓練をすることで更に驚くほど成果は大きくなりました。劇的に変わったと言っても過言ではありません。その他、リズムやスクショの更新など、技術課題を次々と解決し、成長のために適切な演習問題と演習時間を設定しました。暗算はそろばん先生達の間で、「頭の中で見えないから指導が難しい」と言われ、私たちもそう思っていました。しかし、その曖昧さの多くを排除することができました。今後は進級スピードかなり早くなることが見込めるので、新カリキュラムでは、算数や数学にて、もっと暗算技術が使えるように桁不揃いの問題など実践的な問題を取り入れました。検定問題については、同じ級位でも日商検定や日珠連よりも難易度を上に設定しています。
これらの集大成が新テキストです。既に成果を上げている習得法を実装したカリキュラムなので自信を持って発行できます。
これでまた当校の生徒が大きく成長すること間違い無しです!まずは8級7級を発行しましたが、6級以下も順次発行していきます。今後もより一層、指導改善を実施し、少しでも生徒の力を伸ばせるよう気を引き締め、しっかり指導します。引き続きご協力のほどよろしくお願い申し上げます。